ゆきゆきて戦車道 総集編

作品の感想&レビュー

1. mu

   2021年7月14日

   素晴らしい、の一言に尽きる名作

   この作品を初めて見る人は、グロ系や過激なネタを想像してしまうかもしれませんが、実際にはそうではありません。確かにグロテスクな場面がありますが、史実に対する深い理解と洞察、そして、主人公みほの命に対する思いが貫かれている素晴らしい作品です。軍オタ的なナチス持ち上げや共産主義趣味はなく、登場人物たちの行動の理由は終盤の展開で納得がいく構成になっています。映画ゆきゆきて神軍のオマージュ展開もありますが、見ていなくてもフィナーレは感動的であり、主人公みほの贖罪意識はリアリティ溢れるものになっています。軍オタ的な女の子も素晴らしかったです。全体として、作者の良心と洞察、納得感溢れる構成によって出来た奇跡の名作同人誌と言えます。映画に詳しくない人もこの機会にいくつかのネタ元の映画を見てみるのも良いかもしれません。

2. 松尾智之

   2019年10月19日

   これは劇場版パトレイバー２である

   監督の押井守さんは劇場版パトレイバー２で、漫画家のゆうきまさみさんの原作を元に自分が描きたいものを描いてしまいました。パト２には現実味あふれる作風と監督の個性がたくさん詰まっていますが、原作は完全に無視されてしまっています。つまり、素晴らしい作品ではあるけれど、パトレイバーを使ってやる必要があったかということです。本作のゆきゆきて戦車道は人気アニメのガールズ＆パンツァーの二次創作になります。作品には、歴史と軍事に基づいた描写や映画へのオマージュがたくさんあり、それだけでも原作とはかなり違っています。ただ、オマージュやミリタリーに関する考察は現実的な部分であり、作者が描きたいものはまた別の世界です。戦争の悲惨さ、集団に対する不信感、そして人間に対する疑念など、作者が描く悲惨な状況は、適切な構図や構成とともに映えています。こうした描写は、監督の個性がたくさん入っており、漫画に対する誠実さを感じます。この作品は、力強く面白い作品でした。

   私も作者のように、読者として正直に要望を言いたくなりました。オリジナル作品もっと書いてくれたら嬉しいです。あなたの描くキャラクターや物語を読みたいです。もし一から作ることができたら、無理な設定や行動をさせる必要がなくなるのではないでしょうか。舞台背景は無理でも、ノンナの行動には適切な理由があってほしいと思います。